ドラマ『陸王』最終回、見ましたか?
僕は熱いドラマが大好きなので、ドラマ『陸王』も非常に楽しませて貰いました。その『陸王』を見ていた際に、書評を書こうと思っていた書籍「ビジネスモデル症候群」で、僕が思い描く経営者の姿を主人公「宮沢紘一(役所広司)」に見ました。
なので、それを中心に「ビジネスモデル症候群」について書きたいと思います。
そのため、このブログの内容は TBS のドラマ『陸王』の最終回ネタバレを含みます。
既に最終回が放送されてから、しばらく経っているので、もうネタバレ含んでも大丈夫かなとは思いますが、ちょっと待て〜という人はドラマ『陸王』を見てから、この先に進むようにしてください。
で、有料ですが全話見ることができるようです。*1
Blu-ray と DVD でも BOX が 3 月 30 日に発売するみたいです。
ビジネスモデル症候群とは?
書籍「ビジネスモデル症候群」ですが、Lean Startup Japan LLC の和波さんが書かれた
ビジネスモデル(アイディア)があるから失敗するという、今までの常識の逆を解説した書籍です。
起業するからには、イノベーションを起こすような突飛なビジネスモデル(アイディア)を持ってチャレンジするといったことが一般的なスタートアップのイメージなのではないかと思います。ただ、そのキラキラした感じ全開でやると失敗する確率が上がるので、いかに経営を軸としてスタートアップをやるかといった解説している本です。
ビジネスモデル症候群という言葉自体は、
2015 年にこちらのブログで和波さんが発表され、そこから和波さんが色々と活動された内容を盛り込んでいき、2017 年に満を持して書籍化されたといったものです。
なぜ、ビジネスモデル(アイディア)を持つと失敗する可能性が高くなるのかといったことへ心理学を活用して解説する所から始まります。そこから、ビジネスモデル症候群に感染していってしまう流れや環境や背景が紹介され、どうやって脱却していくかといった内容の書籍になっています。
僕の人生訓として、「3 人の師匠を持て」というのがあるのですが、その 3 人の中の一人が和波さんなので、この本が生まれていく過程をそばで見ながら、活動のお手伝いをしてきたりしました。
「再現性のある起業プロセス」を科学的に追求していくという和波さんのスタイルや想いが、この本には詰まっています。
あきらめなければ失敗は確定しない
『陸王』最終回
『陸王』最終回のあらすじですが、
シルクレイを手に入れるために「こはぜ屋」買収をもくろむフェリックスの御園社長(松岡修造)だったが、宮沢(役所広司)から業務提携を提案されたことで両者は袂を分かつ。
<中略>
茂木に自分たちの想いを届けることもできず、陸王開発再開のメドも立たず、八方ふさがりのこはぜ屋だったが、そんなある日、御園から宮沢へある提案が投げかけられる。一体、その提案とは!?*2
といった内容です。
ここに至るまでに、「こはぜ屋」という足袋製造会社の四代目社長・宮澤紘一(役所広司)が、足袋だけでは年々先細っていく売上に頭を悩ませ、そこからの脱却を図るために足袋屋として培った技術を活かしたランニングシューズを開発しようとする所からものがたりは始まり、色々と紆余曲折を経て、その新規事業だけでなく会社そのものの存続すら怪しいといった危機的な状況となりました。
その状況の中で、御園社長(松岡修造)から提案された内容について社内で検討している際に、宮澤紘一(役所広司)が語った中に「ビジネスモデル症候群」が目指す経営者の 1 つの姿を見ました。*3
俺は、フェリックスからの融資を受けたいと思う。
途中、返済出来なくなるリスクは確かにある。やり遂げるのは決して簡単じゃないということは重々承知だ。
だけど、挑戦しなけりゃ、負けもなければ勝ちもない。
何一つ成長せずに、ただ生き延びたって、そんなのは、意味がない。
俺は勝負をしたい。
このこはぜ屋を守るためには、挑戦するしかないんだ!
もしも上手く行かずに、全部失ったとしても、まだ死ぬわけじゃない。
この体一つ、心一つ、残っていれば、必ずまた這い上がれる!
そのことを俺は、飯山さんと茂木選手から教わった。
諦めずに挑み続ければ必ず道は開ける。
それを大地から教えられた。
本当の負けってのは、挑戦することをやめた時だ。
融資を返済できなければ、会社が買収されてしまうかもしれないという局面で、宮澤紘一(役所広司)は、あきらめません。
症状その3:経営破綻
ビジネスモデル(アイディア)を持つから失敗するという所が、書籍「ビジネスモデル症候群」としては強調されがちじゃないかと思います。
ですが、僕がこの本で感じた重要なメッセージとしては、症状その3として語られている「アイディアよりも先に経営が行き詰まる」の部分にあると思っています。
長期間「ネバれる」スタートアップの違いは、単純に「思い込みを脱し、真のニーズを掘り当てるまで、経営が継続できるかどうか」です。
ビジネスを成功させることができるかどうかは、アイディアがイケてるかイケてないかではなく、経営がイケてるかどうかです。
スタート時のアイディアの精度はまったく関係ありません。【書籍「ビジネスモデル症候群」P.53 より引用】
経営が行き詰まるというのは、金銭面もそうですが、経営者のモチベーションが無くなってしまうといったことでも行き詰まりはやってきます。アイディアを試している途中で終わってしまうのです。
実際、自分の会社でもサービス開発をしているので思うのですが、そんな簡単には売れません。また、中々いい結果も出てこない中で、時間は過ぎていくし、お金はかかるといったことが起こります。
そんな中でも、『陸王』の宮澤紘一(役所広司)の様にあきらめず挑み続けて真のニーズを掘り当てれば、失敗となりそうだったことも、すべてはその成功までの糧だったということになります。
あきらめなければ失敗は確定しないのです。
地味(地道)な本
あきらめずに失敗を確定させないためには、経営をイケてる状態にしなければなりません。
スタートアップは経営と事業の二重構造だと思っています。
より正確にたとえるなら、1 階が経営、そして 2 階にビジネスが乗っかっている、2 階建ての家のような造りです。1 階の構造が強固であればあるほど、2 階では必要に応じたビジネスが展開できるようになります。【書籍「ビジネスモデル症候群」P.53 より引用】
といったように、どうイケてる状態にしていくかといったことも触れています。
こういった経営を軸にスタートアップをやるといった話になると、
- スタートアップを成功させるためのたった○○つの方法 とか、
- 成功するビジネスモデル徹底図解 とか、
- イノベーションを起こすアイディアの出し方 とか、
といったようなキラキラしたタイトルの本*4と比べると、地味な内容と取られることがありそうだなと思います。
実際、知人経営者から同時期に読んだスタートアップの他の本と比べて「ビジネスモデル症候群」は地味だよねといった感想を聞いたりもしました。
ですが、本質をついたものは基礎や基本となる型の部分について語ることが多くなるので、そういった印象を持たれやすいのではないかなと思います。
『殺し屋のマーケティング』の作者が本気で選ぶ、ビジネスマンなら読んでおかなければならない「24冊の特選マーケティング本」《天狼院書店/WRITING LIFE》 | 天狼院書店
という記事で、天狼院書店店主の方も「ビジネスモデル症候群」を取り上げていますが、同じ様なことを書かれています。
僕もキラキラしたのは好き*5ですが、やはり地道にやらなければならない所、基礎や基本となる型は大事にしないといけないと思っています。
まとめ
ということで、キラキラした『陸王』の中で熱く語られた内容は、地道にやってきたことに裏打ちされていたが故に宮澤紘一(役所広司)がカッコイイということだと思います。経営者として苦悩・葛藤したり、その中でちょっとした喜びがあったりという日常の中で、地道ながらもあきらめずに挑戦し続けるということが習慣化された経営者としての姿が、そこにありました。
そんな経営者に憧れた人は、スタートアップを始める始めないに関わらず、ぜひ「ビジネスモデル症候群 ~なぜ、スタートアップの失敗は繰り返されるのか?」を読んでみるといいかと思います。
仕事をする中でも経営者的視点を持って仕事をした方が、よいパフォーマンスを出すことが多いと思いますので。
ビジネスモデル症候群 ~なぜ、スタートアップの失敗は繰り返されるのか?
- 作者: 和波俊久
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2017/09/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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また、師匠である和波さんと話していると、この本の中では少なかった HowTo よりの話などを実施されている Lean Action Program の中などで、今後展開されいくみたいです。こちらも、乞うご期待です!
もう少し、『陸王』と絡めて「ビジネスモデル症候群」を語りたい所ですが、長くなったので、また別の機会に。