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ドラマ『陸王』で読み解く「ビジネスモデル症候群」

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少し前に、

actier-coo.hatenablog.com

といったブログ記事を書いて反響があったので、今度はドラマ『陸王』を見ていた際に感じた書籍「ビジネスモデル症候群」に通じる話を記事にしました。
今回はビジネスモデル症候群に陥りきらなかった主人公である経営者 宮沢紘一(役所広司)の姿から、書籍「ビジネスモデル症候群」の読み解きをしていきたいと思います。

皆さん、ドラマ『陸王』見ましたか?
非常に熱いドラマで、起業や経営に興味がある方は、そこに今回ご紹介するような色々な学びがありますので、ぜひ見て頂くといいのではないかと思います。

www.tbs.co.jp

この先、このブログの内容は TBS のドラマ『陸王』のネタバレを含んでいるので、まだ見てなくて見るぞという方は、ドラマ『陸王』を見てから、この先に進むようにしてください。

陸王 | 動画配信のTBSオンデマンド

で、有料ですが全話見ることができるようです。

陸王 -ディレクターズカット版- Blu-ray BOX

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Blu-ray と DVD でも BOX が発売されています。

ビジネスモデル症候群とは?

書籍「ビジネスモデル症候群」ですが、Lean Startup Japan LLC の和波さんが書かれた
ビジネスモデル(アイディア)があるから失敗するという、今までの常識の逆を解説した書籍です。

ビジネスモデル症候群 ~なぜ、スタートアップの失敗は繰り返されるのか?

ビジネスモデル症候群 ~なぜ、スタートアップの失敗は繰り返されるのか?

 

って、この辺りは、前回書いているので、そちらを参照するか、まだ読まれてない方は書籍を読んで頂くのがいいのではないかと思います。

ドラマ『陸王』最終回に書籍「ビジネスモデル症候群」が目指す経営者の姿を見た - Actier COO(くぅ〜)なブログ♪

また、ここから先の章タイトルは特に伝えたいと思った内容に近いタイトルを書籍「ビジネスモデル症候群」の章タイトルから引用してきましたので、気になった方は、そこを更に読んで頂くと伝わりやすいのではないかと思います。

ビジネスモデル症候群からの脱却

書籍では、「ビジネスモデルがあるが故に、そのアイディアに縛られてしまって、立ち直れない失敗へとの道を進んでいってしまう」この状態を『ビジネスモデル症候群』と読んでおり、では、その対策としてどうするべきなのか、どう脱却していくかといったことが第 3 章から解説されています。

「確証バイアス」「ヒューリスティック」「手段の目的化」に対処する

直感的に思いついたアイディア(ヒューリスティック)を信じ込み、アイディアへの賛同者が増えて集団化すると、どんどん視野が狭くなり(バイアス)、やがてなんのために起業したのかがわからなくなる(手段の目的化)ーーこの一連の流れは、必ずセットで対策を打つべきです。起業において、ほとんどのひとが例外なく陥る典型的なこの失敗パターンは、しっかりと原因を理解して、対策を実践してください。

【書籍「ビジネスモデル症候群」P.127 より引用】

と、対策についての書き出しは上記のように始まっています。
この一文が、ビジネスモデル症候群へと陥るメカニズムを的確に表わしています。

  1. 直感的に思いついたアイディアは真実である可能性が低い
  2. アイディアが仮に間違っていたとしても環境によって、それを疑うことが無くなっていく
  3. アイディアで思いついた 1 つの手段に捕われてしまい、課題に対する複数の解決策を見れなくなる
  4. アイディアに固執したスパイラルが生まれた結果、アイディアよりも経営が続かなくなる

なぜ、こういったメカニズムとなっていってしまうのかについての詳細は、書籍を読んで頂くとよく分かります。

実際、『陸王』の第 1 話のあらすじを読んでみると

埼玉県行田市にある足袋製造会社「こはぜ屋」。その四代目社長・宮沢紘一(役所広司は、年々先細る足袋の需要から今日も資金繰りに頭を悩ませていた。 そんなある日、メインバンクである埼玉中央銀行へ、追加融資の相談に訪れた宮沢。なんとか今回の稟議は受け付けてもらえたが、融資担当の坂本(風間俊介から、新規事業に踏み出してみてはどうかと提案をされる。
突飛な話だったためその場は軽く応えた宮沢だったが、「こはぜ屋」の存続がかかっているテーマだけに、真剣に考えはじめると、ほどなく、あるきっかけで新規事業について閃く。それは、足袋製造会社としてこれまで培った技術が活かせる“裸足感覚”を追及したランニングシューズの開発だった。

といった内容なので、『陸王』も「"裸足感覚"を追求したランニングシューズ」というめっちゃアイディアから始まってしまっていますw
普通だと、ビジネスモデル症候群まっしぐらです。

残念ながら、ビジネスモデル症候群から脱却することは永久にできないと思います。いまだに私自身も、ふとアイディアが浮かんだ際には「やった!」と思ってしまいますから、正確には「脱却」はできません。しかし、しっかりと対策を打っておくことによって「ビジネスモデル症候群による悪影響」からは脱却することができます。要するに、何度、ビジネスモデル症候群に陥ったとしても、必ずそのことに気づくことができる、ふりかえりの仕組みを持っておけばいいのです。

【書籍「ビジネスモデル症候群」P.125 より引用】

書籍でも、アイディアから始まってしまうことからの完全な「脱却」は難しいと書かれています。やはり、これはいいと思ったもの(アイディア)からスタートすることは多いと僕も思います。ですが、ビジネスモデル症候群への対策がなされていることで、アイディアに固執しすぎない形で進めていくことができる様になるハズで、『陸王』もその展開になったと思っています。

その閃いたランニングシューズの開発といったアイディアから始まって、ちょっとうまく行ったら進むべき道を見誤りかけたり、素材や機械の問題でランニングシューズの開発継続が難しくなったり、資金調達がうまく行かなかったりと様々な困難がやってきます。その中で、宮沢紘一(役所広司)は苦悩し葛藤する訳ですが、ビジネスモデル症候群に陥りきらなかった結果、イノベーションへの道が開かれかけた感じで終わります。それは狙って対策をした訳ではなさそう*1ですが、改めて分析してみるとビジネスモデル症候群への対策が行われていた結果、そうなったのではといったストーリーになっています。

アイディアを探そうとするのではなく、問題を理解する

「問題を正しく理解する前に答えを出そうとしてしまうから」

【書籍「ビジネスモデル症候群」P.136 より引用】

ビジネスモデル症候群に陥って失敗する要素として、ニーズのない問題に対してビジネスをしようとして失敗するといった要素があります。

解決策はコレでいけるんじゃないかということを思いつくと、その問題の本質を捉えていない状態で取り組んでしまうといった傾向が、人としては多かれ少なかれあると思います。それでは、実際には必要とされない、方向性がズレたものを提供してしまう可能性があります。ニーズからズレたものを提供してしまうと使われることは無いので、ズレたアイディア(解決策)ではなく、何が問題なのかを正しく理解して解決策を出さなければなりません。

きちんと問題を捉えるためには、その領域にしっかりと踏み込んで、そこで何が起こっているのか、どんな問題があるのか、どんな状況なのかといったことを捉える必要があります。

陸王』でも、宮沢紘一(役所広司)はランニングやマラソンを知らない素人から始まります。その中で、スポーツ用品店の店主でランニングインストラクターの資格を持つ有村融(光石研)から話を聞いたりと、段々とその領域に入り込んでいきます。
実業団に作った靴を持っていた際も、「素人が作った靴を履かせられるか」といった感じで監督に拒否をされていました。足繁く通ったり、それぞれの選手の特性や戦績を把握したりとしていく中で、その業界の一人者であるカリスマシューフィッターや監督の心を動かして、選手に靴を履いて貰えるといった所にこぎつけます。

故障した選手が再度故障してしまうようなことが無いように体に負荷がかかりにくい走法が必要という問題に対して、ミッドフット走法が身体や筋肉への負荷が低い、そのミッドフット走法を自然と行うことができる足袋型のランニングシューズという問題を捉えた解決策を提供できたことが、結果として陸王の成功に繋がったのだと思います。

直感的なアイディアで単純に勝負するのではなく、ニーズを捉えたビジネスをするためには、

  • その領域に入り込み知識を得る
  • 知識を得ていく過程で、その領域のスペシャリストの信頼を得る
  • スペシャリストの助言とかも含めて問題の本質が見えてくる
  • 問題の本質にアプローチする解決策を考える

といった流れで、取り組んでいくことが成功に繋がっていくと思います。

よいメンターを手に入れよう

ビジネスモデルやアイディアに固執しそうになったり、進めていく中で間違った道に進みそうになっていたとしても、客観的に見てくれ伴走してくれるメンターがいると、バイアスやヒューリスティックの罠に陥りにくくになります。

書籍「ビジネスモデル症候群」でも

  • 「成功の後押し」ではなく「大失敗させないためのアドバイス」をしてくれる人
  • 課題の当事者

といったよいメンターになりうる可能性があるタイプについて、2 つのポイントが紹介されています。

陸王』でも、宮沢紘一(役所広司)を支えるよいメンター役となっている人達がいます。最終回で息子である宮沢大地(山崎賢人)の面接シーンで、言葉としてそれぞれのメンターが表現されています。

正直申しまして、最初は足袋屋がランニングシューズを作るなんて夢物語だと思いました。
でも、一つ壁にぶつかるたびに親父の・・・あ、すいません
父の陸王にかける想いに賛同してくれた人達が、力を貸してくれたんです。

時に厳しく、時には自分のこと以上に親身になってこはぜ屋の将来を思ってくれた銀行員、
シルクレイというすごい素材を開発して、それをうちに使わせてくれた特許の持ち主、
大手のアトランティスを辞めて、こはぜ屋に来てくれたカリスマシューフィッター、
そしてなにより、うちを信じて陸王を履いてくれた茂木選手。
他にも沢山の人がうちに力を貸してくれました。
その誰一人欠けても、陸王は完成することはできなかったと思います。

大失敗をさせないためのアドバイスをしてくれた筆頭格といえば、時に厳しく、時には自分のこと以上に親身になった坂本太郎風間俊介)です。先程の第 1 話あらすじの通り、彼がいなければランニングシューズ陸王は生まれることは無かったし、課題の当事者に引き合わせてくれたり、資金繰りや煮詰まったときにアドバイスをくれたのは彼でした。的確なタイミングで「大失敗させないためのアドバイス」をしてくれていました。また、最初は憎まれ役だった銀行員の人達も要所要所で支えてくれるプチメンターの様な存在でした。シルクレイを提供してくれた飯山晴之(寺尾聰)も、特許と技術を提供してくれただけでなく、一度失敗した経営者として感じた心得のようなものを教えてくれるメンターをしていました。

課題の当事者といえば、カリスマシューフィッター村野尊彦(市川右團次)がランニングシューズのスペシャリストとして支えてくれましたし、故障して復帰を目指す茂木裕人(竹内涼真)が取組むべき課題の当事者や体験者およびエバンジェリストとして陸王を支えてくれました。
また、彼らに会わせてくれたスポーツ用品店の店主でランニングインストラクターの資格を持つ有村融(光石研)も課題の当事者であり、物語全体を通して重要なメンター役でした。

宮沢紘一(役所広司)が問題に真剣に取り組んだことで、彼らの信頼を得て、その適切なアドバイスを咀嚼し有効に活かせたことで、陸王は成功に近づいていきました。

やりたいこと・できること・求められること

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起業を考えるひとの頭のなかには、当然、自分が「やりたいこと」があります。
<中略>
また、創業者が「やりたい」と思っていても、じつはそれを「できない」という不一致も生まれます。
<中略>
最も重要なのは、「やりたいし、できること」があったとしても、それがマーケットから「求められる」ことでないと、やはりビジネスは成功しないことです。

【書籍「ビジネスモデル症候群」P.175 〜 176 より引用】

アイディアから始めるとビジネスモデル症候群になりやすいということに対して、「では、アイディアなしでどうするのか?」といった疑問が、この本を読むと出てくるかと思います。
僕は、この本を読む中と和波さんと話している中での解として、この P.177 に出てくる図が解だと思っています。パッと出のアイディアに固執するのではなく、やりたいことを見つけ、できることを増やし、求められることとマッチさせるということが成功に近づいていく一つの道だと思います。

陸王』で考えてみると、

  • やりたいこと
    →"裸足感覚"を追求したランニングシューズの開発から始まり、選手のサポート。そして世界一のランニングシューズへ
  • できること
    →足袋屋としての足袋作りの縫製技術などのノウハウ、シルクレイという軽量で固い素材のソールへの適用、耐久力のあるアッパー素材の導入
  • 求められていること
    →身体や筋肉に負荷がかかりにくいミッドフット走法が自然と身につく軽量のランニングシューズ

これらがマッチした結果が最終回へと繋がっていきます。
できることが少しずつ増えていき、やりたいことも少しずつ変化し、最終的に求められている所へ、その熱い想いが伝わった結果が成功へと繋がっていきます。

起業とは「経営者という人生を選択すること」

起業の本質をひとことで表現すれば、「経営者という人生を選択する」こと。それ以外の何ものでもありません。

【書籍「ビジネスモデル症候群」P.169 より引用】

起業するということは、何かのアイディアを形にしたり、製品を売ったりすることではなく、経営者になるということです。
経営者であれば、自己の責任の中で自分と家族の生活を支えねばなりませんし、自分が下した判断の結果で物事が良くも悪くも決まっていったり、従業員や株主などへの社会的責任があったりします。

そういった中でも、やりたいことを追い続け経営者としての人生を楽しみながら、できることを増やして求められていることへマッチしていけるかどうか、それが起業して成功へと歩んでいけるかどうかに繋がると思います。

陸王』の中でも、宮沢紘一(役所広司)が経営者として苦悩している姿が、時に息子にあたったり、資金繰りで苦しんでいる番頭役の社員と議論したりと、家族とのシーンや従業員とのシーンで様々描かれています。そんな中でも彼は楽しんでいましたし、最終回では息子が面接で「こはぜ屋さんでの日々を通して、君はなにを学びましたか?」という問いに以下の様なことを言っています。これは、そんな父親の背中を見てきた息子が感じ取った経営者(仕事)の本質なのではないかと思います。

仕事の厳しさと、そこに逃げずに挑戦する楽しさです。
それが仕事の本当の面白さだと、気付かされました。

やりたいことを追い続け、経営者として日々の人生を地道に歩んでいれば、こういった形になっていくのではないかと思います。

売上ばかりを優先しているとスタートアップでは無くなる?

できることを地道にやって経営者としての売上を求めていくという話になると、「スタートアップ」といったキラキラした感じの言葉でイメージされる組織ではなく、「中小企業」といった地味な言葉でイメージする組織に近づいていってしまうのではないかといった懸念があります。

人数の規模感といった様な所では、別に呼び方が違うだけで組織体としては同じですが、やりたいことが無い中で日々売上を求めていくといったことになると、ここでいう「中小企業」という言葉でイメージする組織に近づいていってしまうと思います。
とはいえ、組織を運営していると日々の活動資金や従業員の給与といった現実的に必要なお金は出てくるので売上は必要です。実際、自分が経営をしている中でも、やりたいことを追うのか、売上を上げることを考えるのかは、悩むポイントの一つになることがちょいちょいあります。

「経営の継続を重視しつつも、売上はテーマに即したビジネスで補う」

【書籍「ビジネスモデル症候群」P.202 より引用】

書籍「ビジネスモデル症候群」では「中小企業」という言葉でイメージする組織に近づかないために、売上を上げながらテーマを追うことの重要性が書いてあります。

陸王』でも資金繰りに頭を悩ませるシーンが多いのですが、その中で陸王のために試行錯誤していたシルクレイのソール技術を応用した「足軽大将」という新しい地下足袋を開発し、ヒットさせることで資金繰りを解決するという展開があります。

自分達のやりたいことを追い、できることが増えていっている中、それを活用することで世の中が求めていた脅威の軽さと丈夫さといった新たな足袋を提供できたことで、売上に繋がり資金繰りに明るい兆しが見えました。陸王開発に反対していた番頭役も、「陸王に挑戦していなかったら、この成功もありませんでした」と陸王開発(やりたいこと)を認めてくれます。

テーマを追いながら、その中で身につけたできることを活用して求められているものを製品化をして売上を上げて、また次の一歩に繋げる。その繰り返しをしていくことで、成功へと一歩ずつ近づいていくことになるかと思います。

その先のイノベーション

そんな一歩一歩を進めていった先に、イノベーションを起こすような何かが生まれることがあるのではないかなと思います。イノベーションが生まれるためにはタイミングや運、巡り合わせといったような要素が必要となります。ただ、それらを捉える前段階として基盤ができていないと、その先は無いということですね。

陸王』でも、最後、イノベーションが生まれていきそうな展開となっていますが、まだまだ色々と苦悩があるのではないかと思います。が、彼らなら、きっとそれを乗り越えて世界一のランニングシューズを作るのではないかといった夢を見せてくれました。
起業をしようという人は、同じように夢を見せる必要もあると思っています。

そんな経営者に憧れた人は、アイディアに固執して失敗しないように、ぜひ「ビジネスモデル症候群 ~なぜ、スタートアップの失敗は繰り返されるのか?」を読んでみるといいかと思います。

前回のブログで、著者の和波さんが、この本の中では少なかった HowTo よりの話などを実施されている Lean Action Program の中などで、今後展開されいくみたいですと書いていましたが、早速、和波さんが動かれました。

leanstartupjapan.co.jp

「起業デビューサポート」というタイトルでトレーニングを、ほぼ毎週展開していくとのこと。
こちらも、楽しみですね!

僕も宮沢紘一(役所広司)の様な熱い経営者になれる様、日々、頑張っていきます!

*1:物語なので語られなかった部分では色々あったかもしれませんが